Archive for the ‘コラム’ Category

ハラスメント

2024-08-06

近年、「〇〇ハラスメント」という言葉をよく耳にします。
この「ハラスメント」とは、「いやがらせ」「いじめ」を指す言葉です。
具体的には、身体的・精神的な攻撃などによって他者に不利益なダメージを与えたり、不愉快にさせる事を意味しています。
現在では、このハラスメントの種類は40種類以上あると言われており、身体的な部分よりは、精神的に不快に感じる事があるケースを呼ぶものが多くなってきているのではないかと感じます。


たくさんのハラスメントの中で法律によって防止を義務化されているものもあります。
労働施策総合推進法(通称パワハラ防止法)により、職場におけるハラスメント防止のために、事業主に対して雇用上必要な措置を講ずるように令和4年4月1日より義務化されています。これは、大企業のみならず、全ての企業が対象となっています。
このパワハラによる、企業に対しての3つの措置とは

・パワハラについての方針を明確化して従業員に周知・啓発する
・パワハラの相談に対するための体制の整備
・パワハラの相談を受けたら迅速かつ適切に対応する

というものです。


この法律自体は令和2年6月から施行されているため、既に対応されていると思います。またこの改正に合わせて、セクハラ・妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントについても整備された法人も多いと思います。

監査に伺う多くの中小法人では、就業規則の制定は進んでいるものの、ハラスメントなどの相談においては、個別事象も多く一概に対策が出来るものではないのが現状だと思います。
実際会計監査で伺った際に、ハラスメントにおいての相談を受けることも多くなって来ました。会計士・税理士としての立場では直接協力できなくても、士業のネットワークや業界に強い事で、間接的に協力出来る機会も多くありました。
近年では、人事・労務問題は経営を行っていく上で経営者を悩ます深刻な問題になっています。規程の整備等はもちろんの事、従業員の相談窓口以外に士業の相談窓口なども整備する事で円滑な法人運営が出来るようにすることは重要な事だと思います。
問題が起こってからではなく、事前に備えて安心・安定した運営を行っていきましょう。

私立学校法改正(寄附行為・役員等変更編)

2024-07-01

令和7年に向けて私立学校法が一部改正されます。
学校法人を運営されている方は、今回の改正が広範囲の改正である為、不安に思われていると思います。ここではそんな私立学校法改正について触れて行きたいと思います。
かなり広範囲にわたる変更になりますので、いくつかに分けて概要を説明します。
今回のお話は寄附行為及び理事・監事・評議員の変更などについてです。

改めて私立学校法の一部改正についての施行が令和7年4月1日に行われるに当たり
学校法人の運営者の方は、
①令和6年度内
 ・寄附行為の変更
 ・改正後の私学法に適用した理事・監事・評議員の選任方法や人選方法の検討
 ・その他改正法施行に伴う必要事項の策定
②令和7年度
 ・改正後の私学法に適用した理事・監事・評議員の選任

を行っていくことになります。
様々に改正に向けて取り組む事は多いのですが、やはり重要になってくるのが、役員等の人選(整理)についてです。現行の理事・監事・評議員が改正後の新法における資格の構成要件に合致しているかを確認する必要があります。
各法人における現在の役員等及び評議員において、状況が異なっていますが、理事・監事・評議員において
 ①基本的資格
 ②主な構成要件
が定められていますので、まずは上記を満たしているか確認しましょう。
その上で、改正後の資格や構成要件に合致しない方がいらっしゃる場合には退任のタイミングを決定しなければなりません。
また、現在の任期においても確認し、新法施工までに任期が到来するかどうかを確認しながら、仮に到来する場合には任期の伸長や短縮などの検討も行います。

これらを行い、人選が確定したら、新寄附行為における内容の確認や役員報酬規程などの策定を行っていくようになります。

全体のスケジュールなどは、各都道府県などで異なっていますが、多くの法人は寄附行為変更などにおいては所属する都道府県庁の指示に従って行うようにしてください。
また現在においては、私立学校法改正の内容についての行政説明が終了しており、現在は多くの法人で人選の最中ではないかと思われます。

全体的な資料は文部科学省より排出されておりますが、各都道府県においても文部科学省管轄法人と知事所轄法人で取扱いが若干異なっている為、説明会等で配布されている資料を参考に改正を行うのが良いかと思われます。
必ず行わなければならないものになりますので、忙しい最中ではありますが忘れず行っていきましょう。

令和6年度 保育関係予算の概要

2024-03-28

2023年の年末に令和6年度の保育関係予算についての概要等資料がこども家庭庁より公表されました。

https://www.cfa.go.jp/policies/hoiku/yosan

令和5年度においては処遇改善Ⅱにおける研修要件の義務化や人事院勧告の大幅アップなど様々な変更がありましたが、令和6年度においても経営者において注目すべき内容が書かれております。
その内容についていくつかご紹介します。

・職員配置基準の改善(4・5歳児職員配置基準の改善)
 こども未来戦略(案)を踏まえ、4・5歳児の職員配置基準を30対1から25対1と改善し、それに対応する加算措置が取られることになりました。
 こちらは、あくまで義務化されず加算項目となっており、チーム保育加算を取得している施設は既に25対1以上の手厚い配置がなされているため追加の加算は適用できない事になっています。

・処遇改善加算の書類関係の見直し
 処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの計画書の提出を原則的に廃止。代わりに賃金改善を行う旨の誓約書を提出することになりました。
 引き続き、事務の簡素化や令和7年度に向けた予算の一本化について検討を行っていく予定です。

・こども誰でも通園制度(仮称)の試行的実施
 全ての子育て家庭を対象とした支援の強化として、就労要件を問わず時間単位で柔軟に利用できる
「こども誰でも通園制度(仮称)」の本格実施を見据えた試行的事業について支援を行う事になりました。
 令和6年1月17日現在では全国108の市町村で試行的に実施される予定になっております。

それ以外にも様々な予算についての説明があり、令和5年度からの引き続きの予算についての内容もあります。取捨選択が必要な部分もありますが、国が大きく変更したものもあるので必ずチェックすることが必要かと思われます。今回は、保育関係予算について触れていますが、こども家庭庁当初予算案の中にも放課後児童健全育成事業(学童)についての記載など、法人毎で必要な情報もありますので、合わせてチェックしてみてください。

まもなく新年度予算を立案し議事に諮る時期にさしかかります。国からのこのような予算の情報や税制改正などをうまく活用しながら、今後の法人運営を行っていただければと思います。

新制度園の処遇改善

2024-01-15

今日は監査にて訪問させていただく関与先様からよくご質問いただく、子ども・子育て支援新制度(以下新制度)での公定価格に係る賃金改善についてのお話をしたいと思います。

今回は賃金改善についての種類と概要についてのご説明です。

新制度において給付される公定価格については、施設の職員へ賃金改善を目的として支給しなければならない給付金が含まれています。

これらは新制度以前からあるものや、新制度が始まってから創設されたものなどがあるのですが、給付の種類や目的・要件などが少しずつ異なっており経営者には難解なものとなっているのが現状なようです。

実際、公定価格の計算方法は従来からあった保育所への委託費などの給付費を参考としているため、新制度移行を行った学校法人の経営者の方は給与体系などを公定価格に含まれる賃金改善分を配分出来るように規定変更が必要となり、大きな転換が求められています。

・人事院勧告

概要:人事院が、民間企業に勤める労働者と一般職の国家公務員の給与水準を比較検討して、双方の給与水準の格差をなくすことを目標にした加算。

給付方法:国の人事院勧告加算率に準じて給付。初任給及び報酬月額を引き上げる。またボーナス支給額を民間の支給状況にふまえて引き上げる。支給額は年度の4月に遡り配分。給付年度は例外として、一時金として支給する事も可能。

・処遇改善Ⅰ

概要:職員一人当たりの平均経験年数によって加算率が上がる制度。基礎分、賃金改善要件分、キャリアパス要件分がある。

給付方法:毎月の給付費に加算して各施設に給付。配分方法や時期は計画書に基づき配分

・処遇改善Ⅱ

概要:幼稚園教諭、保育士などのキャリアアップに向けて研修体制を確立し、技能や経験を積んだ職員に対して賃金を上乗せできる制度。

給付方法:毎月の給付費に加算して各施設に給付。配分方法は給与規程などに明記して、辞令を発令し給付。給付をうける職員は一定の研修の終了などの要件が必要。計画書や実績報告書の作成が必要。

・処遇改善Ⅲ

概要:処遇改善Ⅰと同様に給与水準を継続的に改善するために支給される給付費。

給付方法:毎月の給付費に加算して施設に給付。支給対象者には一定の要件あり。配分方法は給与規程などに明記して給付。計画書や実績報告書の作成が必要。

処遇改善の給付を受け配分する際には、各種制度に詳しい社会保険労務士、税理士等の専門家にアドバイスをもらい、各種制度の内容を理解しながらルールに従って確実に支給しましょう。

また、令和6年度以降複雑だったこれらの人件費に係る給付費について、一部変更していく流れがあるようです。これらについても今後のコラムで触れていくようにします。

振込手数料は誰が負担するか

2023-12-17

本日は振込手数料のお話です。取引先への支払いの際に金融機関を使用する場合、振込手数料がかかりますが、その振込手数料はどちらが負担するべきなのでしょうか。
そんな疑問について考えた事はないでしょうか。最近はインボイス制度が始まり、改めて振込手数料について、取引先から負担をお願いされるような手紙が届いたなんて事もあるかもしれません。
振込手数料についての負担は売り手・買い手のどちらに義務があるのか。まずはどちらに負担義務があるのかをお話します。

ズバリ、買い手側が原則として負担しなければなりません。この根拠は民法に記載されています。
民法484条・485条において詳しくは書かれているのですが、これらの条文を簡単に説明すると、債務の弁済(支払い)は、売主への口座に入金されて初めて代金が支払った事になるとされており、弁済の費用は別段の定めがない限り債務者(買主)負担とするとなっているため振込手数料も弁済の費用の一部となることから、買い手側の負担となるのです。

振込手数料の負担者がどちらなのかをお話したところで、インボイスにおいてこの振込手数料の負担を依頼する手紙が届いているというお話について触れたいと思います。
インボイス制度下において、仮に売主側が負担した場合いくつかの方法があるのですが、ひと手間が必要になってきます。
・売り手が買い手に対して適格変換請求書を交付する
・売り手が買い手に対して仕入明細書を交付する
・売り手が買い手から金融機関の適格請求書と立替金清算書を受取り保存する
上記の3つの方法があります。簡単に説明すると、売上値引きとして処理したり、売り手から買い手側に支払った手数料として処理したりすることによって、本来買い手側が負担すべき振込手数料を売り手側が負担するというものです。
どの方法にしてもインボイス制度下においては、売り手側が手数料を負担する場合、どの方法で負担しているのかを明らかにする必要があるというのが重要なのです。
そのため、顧問する専門家からすると、上記の方法のどの処理にするのか、又は買い手負担にしてもらうことによって、処理を考えなくてもよいという考えの下で、依頼文が届いているということになります。
買い手側に依頼する場合は、「振込手数料は御社負担にてお願いします。」と一文請求書などに添えるだけで負担を依頼することが可能です。
とはいえ、それぞれの取引については日頃からの関係もありますので、たとえインボイス制度が始まったからといえど、慎重に行う必要があるのが前提ですけどね。
インボイス制度が始まり、振込手数料の負担についても一部注目されていますので、請求書なども改めて注意して見てみてください。

暦年贈与の注意点

2023-11-30

こんにちは!公認会計士・税理士の郷原玄哉です。
本日は暦年贈与、特に子供さんなどの法定相続人へ贈与する際の注意点についてご説明したいと思います。
まず「暦年贈与」について簡単にご説明いたします。
「暦年贈与」は、1月1日から12月31日までの1年間(暦年)で、贈与額が110万円以下ならば贈与税がかからないというしくみを利用した贈与方法です。
X-110万円=贈与額(課税財産)となる訳なのですが、では110万円以下であればどんな形でも税金が課されず贈与成立!というわけにはいきません。
また、贈与税の対象となる課税財産はお金に限らず、不動産や車など各種権利などの経済的な価値のある様々なものが対象となります。
次に暦年贈与の方法ですが、単に現金を渡したい相手に渡せば終わりというわけではありません。一般的には、以下に留意する必要があります。
①贈与契約書を作成する。
 贈与契約書は「いつ」「誰が誰に」「いくら(何を)」「どのような方法」で渡すのか
を記載したものになります。
②現金等財産を受け渡す
 贈与契約などに基づいて資金等経済的財産を受け渡します。現金の場合には振り込みなどで、資金の移動がしっかり根拠が残るようにするようにしましょう。また不動産などであれば、名義変更や資産変更登記などで贈与の根拠を残しましょう。
③贈与額が110万円を超えたら申告、納税を行う。
 年間の贈与金額が控除額を超えたら申告・納税をしっかり行いましょう。贈与税の申告は受け取った側が行います。申告時期は贈与が行われた翌年の2月15日から3月15日
に行います。

暦年贈与と見做されない!?

さてここからが本番です。
一般的な相続税対策として暦年贈与を利用して親から子供へ資金を移動することがありますが、この際に暦年贈与と見做されない事があります。ここでは、暦年贈与と認められないおそれのある2つのケースにて説明します。
①定期贈与
定期贈与とは、決められた期間に一定額を受け渡す方法です。例えば10年で1000万円を渡すとして、毎年100万円贈与しますとしていた場合、毎年の暦年贈与ではなく、贈与開始時に1000万円を受け取る贈与を受けたとみなされ、暦年贈与とされない可能性があります。
②名義預金
 名義預金とは、本人と異なる名義の口座に預金することです。子や孫にと贈与をしているつもりでも、子や孫は知らなかったり、実際その資金を使用できなかったら、単なる別名義での預金にすぎません。
受け取り側も贈与について把握しており、契約書にサインしていたり、資金を実際に使用している等の実態がなければ名義預金と認定されてしまい、贈与がなされていないと判断されるおそれがありますので注意しましょう。

その他、贈与にあたり以下についても留意が必要になります。
①暦年贈与と併用できる相続税の非課税制度
・贈与税の配偶者控除
・住宅取得等資金の非課税制度
・教育資金の一括贈与
・結婚、子育て資金の一括贈与
②相続時精算課税制度は暦年贈与とは併用できない
③亡くなった日の3年前までの贈与が相続財産と見做される
 (2023年の改正により7年前に)
顧問先などで暦年贈与を行っている先や、相談・昨今の相続税の改正などで質問を受けるケースも多くなってます。そもそも暦年贈与について、一般的に誤解されている内容も多々見受けられます。

今後、相続税の改正により相続税負担が増える可能性などを考えると、今後は若い世代へ財産移転を考えていくという方も増えると思います。まずは、暦年贈与についての正しい知識をつけていただきたいと思います。また、皆様の次世代への思いがよりきれいな形で実現できるように、専門家を活用しながら行うことのきっかけになることを祈っています。

手取契約

2023-11-05

こんにちは!公認会計士・税理士の郷原玄哉です。

所得税、特に源泉所得税は税金の中でも特に身近な税金として認識されているものではないでしょうか。
事業を行っている個人・企業の方においては、源泉所得税を徴収する義務があります。
このような方を「源泉徴収義務者」というのですが、源泉徴収義務の範囲は給与に限ったものではありません。
士業の方や講師料として報酬の支払いを行った場合には源泉徴収を行う必要があります。

ところで講師の先生への報酬などを支払う場合、源泉所得税を行った場合、源泉徴収後の報酬が1円単位までの報酬額になってしまうので、丸い数字、例えば10万円ぴったりに支払いたいなどの支払いを行いたいと考えた事業者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
私は公益法人の顧問先様と関わる機会も多いのですが、公益法人の顧問先様などは、このようなご質問を受けることがあります。

報酬に関しては、先ほどご説明した通り源泉徴収の必要があります。報酬の支払い先が確定申告を行うため源泉聴取をしませんでしたという理屈は通用しません。過去の裁判においても、支払い相手先が確定申告を行っていることを理由として源泉徴収しなかったという事においては認められないとの判例が出ています。

計算方法

では、源泉徴収した上で、端数が出ないように支払う方法はないのでしょうか。
実はあります。その方法を「手取契約」と言います。この計算方法は国税庁のホームーページでも紹介
されています。
ここでは、手取契約の計算方法についてご説明します。

①渡したい金額(手取金額)を決める
②手取金額÷0.8979=報酬金額
③報酬金額-手取金額=源泉所得税額 
④源泉所得税額を報酬支払の翌月に税務署へ納付する

実はものすごく簡単なのです。
更にポイントを押さえておくとより理解が深まります。ポイントとなる内容をいくつかご説明します。
・報酬における税率は100万円までは 10.21% 100万円を超える額は20.42%
・②で割り戻す計算根拠  1-0.1021(10.21%) = 0.8979
・例えば手取報酬を100,000円の場合
  100,000÷0.8979=111,370円
  源泉所得税額   11,370円(1円未満の端数は切り捨てます)

ここでのポイントで特に重要なのが、税額を覚えておく事です。割り戻す数字の計算方法をを覚えて
おけばどのような金額でも計算できます。
報酬に関する源泉徴収に関しては、通常契約や手取契約方法を押さえて、しっかり徴収を行いましょう。
それから、源泉徴収した後の納税もお忘れなく。

参考:国税庁ホームページ(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2792_qa.htm)

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